【開催報告】SDG4探究café-みんなで教育課題を解決しよう-

<SDGs探究caféとは?>
年に数回、SDGs17のゴールひとつひとつについて、その分野の専門家の方を講師にお招きし、起きている問題や原因についてレクチャーを受けます。その上で、講師も含めた参加者同士で対話しながら、問題に対しての解決策や自分たちが出来るアクションプラン考えていきます。希望者には推薦入試の書類選考時に役立つ講座受講証明書を発行しています。

令和3年12月26日(日)16時から18時まで、SDGs探究Caféを開催しました。今回取り上げたゴールは、「SDG4:質の高い教育をみんなに」です。東京大学 大学院工学系研究科 吉田塁准教授と東京大学 文学部3年生 中條麟太郎さんを講師としてお招きし、身近な教育課題をテーマにオンラインでワークショップを開催しました。

吉田 塁 准教授

中條 麟太郎 学部3年生

<今回のテーマ>
SDG4探究café –みんなで教育課題を解決しよう-

<プログラム全体の流れ>

1.「SDG4に関連する取り組み」
2.「アクティブラーニング(AL)」
3.「現在の教育課題の洗い出し」
4.「教育課題に対する解決策検討」
5.「吉田准教授からのメッセージ」

<内容>

1.SDG4に関連する取り組み

【MOOCs(大規模公開オンライン講座)】
MOOCsは「Massive Open Online Courses」の頭文字をとった略称です。世界中の有名大学がネット上でオンラインコースを提供し、学習者は世界のどこからでも無料で受講することができます。全世界的に展開されるグローバルMOOCと国内で展開されるローカルMOOCがあります。MOOCの中で世界で最もユーザー数が多いのが「Coursera(コウセラ)」というプラットフォームで、ユーザー数は8200万人にのぼります。世界中の誰もが、受けたいと思えばすぐに、簡単に、受けることができます。

【「Coursera」が抱えている課題】
貧富の差の是正、教育機会の平等化など、世界の教育課題を解決してくれているように見える「Coursera」ですが、一方で課題も残されています。例えば、ネット環境が整っていない人は、このサービスを受けることができません。また、そもそも「Coursera」を知らない人もたくさん存在し、当然その人たちもサービスを利用することができません。いわゆる情報格差です。本来届けるべき人になかなか届かず、さらなる教育格差を生み出してしまっている、という側面もあるのです。

2.アクティブラーニング(AL)

アクティブラーニングの定義については、さまざまな意見があり、絶対的な共通の定義は存在しません。シンプルにいうと、一方通行の受け身な学習スタイルではなく、学習者が自ら考えたり、書いたり、発言する能動的な学習スタイルです。

アクティブラーニングが学習効果を高めることは、研究で実証されています。ある大学で実施された大学1年生の物理学の授業において、経験豊富な講師が一方的な授業を行った場合と、経験の少ない講師が双方向な授業を実施した場合に分け、授業後に同じ問題の確認テストを行ったところ、一方的な授業のクラスは5点をピークとする成績分布であったのに対し、双方向な授業のクラスは、11点をピークとする成績分布となり、明らかな結果の差が出ました。また、それ以外にも授業の参加率が上がる、内職をする生徒が減る、などの効果も認められています。

このように高い効果が実証されているにもかかわらず、アクティブラーニングの学校現場への普及はなかなか思うように進んでいないのが実状です。原因は、教員がアクティブラーニングを取り入れるための支援が十分に行き渡っておらず、実践することが難しいという点にあります。

 【アクティブラーニングの普及を進めるための解決策】
吉田准教授と中條さんは、教員がアクティブラーニングをより簡単に導入できるようにできるようにするため、また、生徒が自分の意見を出しやすくするためのオンラインツール「LearnWiz One」を開発しました。このツールを使えば、生徒は匿名で自分の意見を書き込むことができ、教員も生徒も、すべての意見をリアルタイムで見ることができます。また、よいと思う意見には「いいね」をすることができ、「いいね」が多い順に意見が表示されるようになっているため、教員は双方向の授業をスムーズに運営することができます。そして何より、生徒からさまざまな意見が活発に出るようになるため、授業が活性化するのです。

3.現在の教育課題の洗い出し

このパートでは、身近な課題からグローバルな課題まで、どのような教育課題があるかについて、 先程ご紹介したオンラインツール「LearnWiz One」を用いて、意見を出し合いました。その中で、特に参加者の間で関心の高かった3つの課題「授業中の生徒の積極性」「勉強を楽しくする」「情報や地域、お金、意識によって生まれる教育格差」に絞り、3つのグループに分かれて、それぞれに解決策を検討しました。

4.教育課題に対する解決策検討

【グループ①】課題:「授業中の生徒の積極性」
課題→アクティブラーニングを導入して、教員が生徒の積極性を引き出すべきであるが、教員の知識が足りておらず、うまく機能していない
解決策→生徒への教育も必要であるが、同時に先生への教育も必要
解決策→学校でディベート大会を開くなど、自分たちでアクティブラーニングの機会をつくる

【グループ②】課題:「勉強を楽しくする」
課題→勉強が楽しくなくなる原因は、「わからない」状態に陥ること
解決策→教員がアクティブラーニングを導入し、生徒にもっとわかりやすくて、楽しい、と思ってもらえるような工夫をする必要がある
解決策→まずは好きな教科を究める、強制的に課題を与えることをやめる、などして、「勉強=苦」というイメージをなくす

【グループ③】課題:「情報や地域、お金、意識によって生まれる教育格差」
課題→家庭の経済状況によって生じる格差
解決策→返済義務のない奨学金を受けられる機会を増やす
解決策→将来の収入によって返済金額が変動する、出世払い制の奨学金制度を導入する

5.吉田准教授からのメッセージ
・自分が何を学んでいるのか、この学びをもっとよくするためには、どうすればいいかのか、自分の学習を自分で管理する能力を高めていってほしい。そのためには、メタ認知(自分のことを俯瞰して見る力)が重要。自分からどんどん質問をしたり、先生を上手に活用して、自分の学習を自分で管理していってほしい。
・教育の課題は山ほどある。解決策を考えるときには、「自分たちの立場で何ができるか」という観点で考え、当事者意識を持って行動に移していくことが重要。
・私たちは教員の教育力の向上に取り組んでいくので、みなさんは自由な発想、大胆な発想で、自分たちにできることを実践し、教育課題を解決していってほしい。

<受講生の感想>
・楽しい雰囲気で教育課題に対する解決策を話し合うことができた
・その分野の第一線におられる方からの貴重な意見、知識を得ることができ、他の参加者の方々と交流することによって刺激をもらえた。
・他の参加者の考えや自分の発言に対する反応を聞いて、さらに新しい視点で考えられるようになった。
・先生から生徒の一方向的な授業にならないために、授業を聞く側の自分たちの意識改革も必要なので、実践できることからしていきたい。