【開催報告】SDG3探究Café-身体を変える食品添加物-

令和3年12月19日(日)16時から18時まで、SDGs探究Caféを開催いたしました。
北九州市立ユースステーションは、北九州市の持続可能な未来づくりの主役である中高生の探究と実践を応援しています。

【SDGs探究Caféとは?】
年に数回、SDGs17のゴールひとつひとつについて、その分野の専門家の方を講師にお招きし、起きている問題や原因についてレクチャーを受けます。その上で、講師も含めた参加者同士で対話しながら、問題に対しての解決策や自分たちが出来るアクションプランを考えていきます。
第3回目である今回のテーマは「SDG3:身体を変える食品添加物」、北九州市立大学国際環境工学部である 森田 洋先生 に講師を依頼しました。参加者は、ユースステーションの利用者を中心とした北九州市内の高校生を主として10名(対面:4名、オンライン:6名)の参加で行いました。

【イベント趣旨】
 コロナ禍で食生活の変化や食を選択する機会が増えた方は多いと考えます。そこで、食を選ぶ決め手の一つにもなる『食品添加物』に焦点を当てました。本イベントを通して、一人でも多くの人が食品に興味を持ち、食生活についてアクションを起こすきっかけになることを目指しています。

【受講前アンケート】
Q1.食品添加物をどのくらい理解していますか?

Q2.食品成分表示を確認して購入していますか?


【実施概要】
ワークショップでは、まずはじめにユースステーションについての説明、SDGs探究Cafeの趣旨説明を行った上で、講師の森田教授を紹介しました。その後、学生同士の自己紹介を行い、最初のグループワーク(2グループ:対面・オンライン)に入りました。


GROUP WORK 1.
「食品添加物を作った人は?いつどうして何のために作ったか」

このグループワークで出た学生たちの意見は以下のとおりです。
対面グループ
 ・防カビ剤を使用して保存期間を長くするため
 ・見た目をきれいに保つため
 時期
 ・海外から輸入が始まった頃
 ・戦後に海外の食べ物が流行してきた頃

オンライングループ
 ・豆腐のにがり→保存のためではないか
 ・お菓子など、長期保存するために開発されたのではないか
 ・安いコストで食品が作れれるのではないか
 ・味だけでなく、見た目を鮮やかに出来たら良いのではないかという考えで着色料を作った
 ・農業系の人が菌を使って発酵して遠くの人に届けられるようにしたのではないか
 ・効率よく作るために、安いコストで作れば利益が得られるからではないか

これらの発表に対するフィードバックを踏まえて、森田教授に「食品添加物概論」を講義していただきました。

■ 食品添加物の歴史
・古来より自然界で得られたものを利活用(例)岩塩→保存性、色調や風味の向上

・日本では、明治時代初期から「着色料」が普及
⇒緑青、アニリン色素を含み、当時食中毒の原因として問題になっていた
・『食品衛生法』施行(1948年)
⇒食品添加物として使用可能な化学合成品60種類が決定

■ 食品衛生法
【主旨】
・食品、添加物、容器包装等の規格基準の策定
・規格基準に適合しない食品等の販売禁止

【食品添加物の分類】
指定添加物 (472品目、2021年1月15日現在)
 食品衛生法第12条に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めたもの。安全性について、食品安全委員会の評価を受けて、個別に指定される。(例)ソルビン酸、キシリトール など
既存添加物 (357品目、2020年2月26日現在)
 平成7年の法改正の際、わが国においてすでに使用され、長い食経験があるものについて、例外的に指定を受けることなく使用・販売が認められたもの。(例)クチナシ色素、ニンジン色素、タンニン など
天然香料 (約600品目)
 動植物から得られる天然の物質で、食品に香りを付ける目的で使用されるもので、基本的にその使用量はごく僅かであるもの。
(例)バニラ香料、カニ香料 など
一般飲食物添加物 (約100品目)
 通常は食品として用いられるが、食品添加物的な使い方をするもの。 (例)イチゴジュース、ニンジン、寒天 など

■ 食品添加物概論
・食品添加物の主な使用目的について
① 腐敗を防いで保存を良くする(保存料
② 色をつけて、食品本来の色に近付ける(着色料,発色剤
③ コストダウンあるいはダイエット目的で砂糖の替わりに甘さをつける(甘味料
④ 食品が褐色に変化することを抑える(酸化防止剤
⑤ 食品にカビが生えるのを抑える(防ばい剤
⑥ 食品どうしをくっつける(結着剤

■ 食品添加物記載表示の見方
「原材料表示」に記載されている
→「食品添加物以外の原材料」と「食品添加物」に分けて、それぞれ原材料に占める重量の割合の多いものから順に記載する。
⇒原材料か食品添加物かを区別することが義務付けられた(2020年4月より)

レクチャー後に学生が持参したお菓子の原材料・食品添加物を森田先生と確認しました。
例として、チョコレートを含んだお菓子の表示を見ると「結着剤」が記載されていました。結着剤を含むことでお菓子が作られることを目の当たりにし、「今後も表示を見ます」と学生がアクションを起こすきっかけにもなりました。


GROUP WORK 2.
「食品添加物がない世界の利点と欠点を考えよう」

各グループから以下のような発表がありました。
対面グループ


オンライングループ

利点と欠点を考えた上で、”食品添加物が入ると美味しいか否か”意見が割れたので、下記の論点で再びディスカッションを行いました。

発表に対するフィードバックを踏まえて、食品添加物摂取の人体への影響について森田教授より講義をしていただきました。

■ 食品添加物の安全性
・食品添加物を学ぶ上で知っておきたい用語
 『ADI…1日摂取許容量(単位:mg/kg/day)』
  ⇒ADIの設定は、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)が行っている。

■ 商品と食品添加物
・着色料(合成着色料と天然着色料)、甘味料(ダイエット甘味料 等)、保存料(安息香酸 類)などについて例を挙げながら説明。

 講座を受講した学生の感想は以下のとおりで、多少の難しさを感じた生徒がいたものの、多くの高校生が知見を深めることができました。また、毎日身体の中に取り入れるものだからこそ、原材料表示を確認して食品添加物と向き合う姿勢の大切さに気付かされました。森田先生、貴重なお話を誠にありがとうございました。


参加者のコメント
Q1.本日のワークショップは楽しかったですか?そう思った理由をお書きください

・色んな学生さんの意見を聞けたり、身近な食品添加物についてわかりやすい例を用いて説明して頂けたので、楽しく学ぶことが出来ました。
・話し合いだったり、参加したメンバーの話を聞くことが楽しかったから。
・食品添加物についてさまざまな方々の意見や考え方を知れたから。

Q2.本日のワークショップは勉強になりましたか?そう思った理由をお書きください
・身近な食品添加物について知ることは、自分のためだけでなく家族や将来家庭を持った場合にも役立つ知識だし、少し気をつけるだけで大きく変わることだと思ったので、とても勉強になりました。
・食品添加物について今まで触れてこなかったけど今回の講義で詳しく知ることが出来たから。
・食品添加物の始まり・歴史、ADIの計算、合成着色料や安息香酸ナトリウムなどの気をつけるべき食品添加物について、など、自分の知らなかった事が多く知ることができたから。

Q3.今回の講義で講師が一番伝えたかったことは何だと思いますか?
・食品添加物はとってはいけない、ということでも気にせずばんばんとってもいいということでもなく、決められた正しい量を摂取しなければいけないということだと思いました。
・若い人たちが若い頃から食品添加物についてどういうものなのか知っておいてほしいということだと思う。
・食品を購入するときには原材料や食品添加物を確認してから購入するようにするということ。

Q4.今回の講義での学びを、どう実践しますか?
・合成着色料は日頃から気にして見ていたので、安息香酸Naについては買う時に気をつけたいなと思いました。
・食品添加物の中でも体に影響のあるものがあるので、お菓子のパッケージの裏をみて注意して過ごしたいと思う。
・今回の講義で、合成着色料や安息香酸ナトリウムとビタミンCの事を知ることができたので、これからの生活で食品を購入するときはちゃんと原材料名を確認して、合成着色料や安息香酸ナトリウムが入っている商品は、自分の体を守るためにもできるだけ買わないようにします。

次回のSDGs探究Caféは、
令和4年1月30日(日)16時~18時、テーマは「SDG13:地球温暖化の国際会議・COPについて知ろう」です。
講師は、地球環境戦略研究機関(IGES)研究員 大田 純子(おおた じゅんこ)氏 にお願いしています。
北九州市内の中高生はもちろん、全国の高校生のご参加をお待ちしております。

SDG13探究Café
https://www.kitaq-youth.com/2ndsdg13/